【おすすめ書籍】暇と退屈の倫理学|私たちはどう生きるべきか

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私はこの本のタイトルにとても惹かれました。

でも、なぜ惹かれたのか、それはとてもぼんやりとした感情で、読む前はよく分からなかったです。

ただ読み終えた今、そのぼんやりとした感情がわかった気がします。

普段の生活においてなんとなく感じていた違和感や、忙しい毎日を過ごして時間が無いと嘆く一方で、なんとなく退屈と感じる感情。 そういった感情を持っていながら、それに目を向けていなかった自分、いや無意識に目をそらしていたというべきでしょうか。

この本を読む中で、共感する部分が多く、腑に落ちる感覚を何度も味わいました。 自分の中でなんだか分からないけど、なんとなく抱いていた感情、目をそらしてきたその感情が暇・退屈というキーワードで分析されていました。

「暇と退屈」は今までの人生で何度も自分の中に存在して、でもそれはよく分からない。そういう状態だったからこそ、惹かれたのだと思いました。

本書は哲学の本で、数々の哲学者の考え方が引用され、考察されています。私自信哲学に関しては、大学受験の倫理で少しかじった程度で、あまり深く理解していませんでしたが、それでも丁寧に解説・考察されているので、哲学を学んだことがない人でも楽しく読み進めていくことができると思います。

若干、堅苦しい論文に感じる部分もあるかと思いますが、すぐにわかりやすい身近な具体例で示してくれるので、理解しやすかったです。

なんといっても、この本のおかげで倫理学・哲学に大変興味がわいたことが最大の収穫です。大学受験期にはよくわからなかった倫理学ですが、その面白さ奥深さをかじれました。こんな気持ちで高校生の頃も学びたかったなーと少し後悔。

どう生きるかを問う、倫理学。是非その入門書として本書を手にとってみてはいかがでしょうか。

前置きが長くなりましたが、具体的に私が本書を読む中で、自分に照らし合わせて思考した事を綴らせていただこうと思います。

今皆さんはどんな生活をされているでしょうか。平日は仕事をして土日は休むというサイクルで日々を過ごしている方は多いのかなーと思います。もちろん休みなく働きまくっている人もいると思いますが。

どうでしょう。忙しいですか?暇ですか? 色んな感覚があって当然ですが、総じて見た場合、現代の我々の生活は明らかに暇の割合が増えていると思います。一昔前は週休二日ではなく、週休一日が当たり前だったわけですから、自由な時間が全体的に増えていることは納得できると思います。

それもこれも人類の努力によって生産性が上がり、そのおかげで休める時間が増えたわけですが、その時間を本当にやりたいことに使えているでしょうか。

暇はあるけどやることがない。そこでなんとなく人は暇つぶしをする。とりあえず近くにオープンしたらしい、新しいショッピングモールにでも行こうか。そこで楽しい!と心から感じれればよいのですが、なんとなく入り込めないという経験はないでしょうか。暇はあるけど退屈の状態に陥ってしまっているわけです。この感情は我々を苦しめます。

人が幸福に暮らせるように社会は進歩してきたというのに、その恩恵であるはずの暇な時間によって人は退屈させられ、不幸に陥ってしまうのはなんとも皮肉です。

このような退屈という感情に共感する方もいれば、分からないという方もいるでしょう。分からないという方はどういう生活を送っているでしょうか。一つは暇がそもそもない人ではないでしょうか。暇がない故に退屈しない。実にシンプルです。

私はこれまでの人生を振り返ったとき、この暇がない故に退屈しないという状態が多かったと考えています。大学生の時もなるべく暇な時間を作らず、とにかくスケジュール帳をいっぱいにしたいと感じていた節があります。講義のない時間にアルバイトをいれ、空いた時間で勉強に精を出して取り組み、それでも空いた時間に友達と遊ぶ予定をいれました。とにかく「何もすることがない」という状態を作りたくなかったのです。

実際、大学生活を思い出すと、一日中何もしなかった日なんてなかったように思います。それは大学生の時に限りません。高校生の頃は部活と勉強以外に時間を費やしたことがほとんどありませんでした。

これは私にとって「何もすることがない」という状態を避けていたのだと思います。なぜかというと、何もすることがない退屈という感情を抱きたくなかったからだと思うのです。

私はこれまでの生活に後悔はないですし、一生懸命勉強して大学に入って良かったと思っています。大学生活も暇せず充実させて良かったと思っています。しかし今回、『暇と退屈の倫理学』を読んで、「忙しい生活」には落とし穴があるということに気づきました。

「退屈という感情を避けるために日々をあえて忙しくしていないか」

例えば、資格試験の勉強をしている人がいるとします。いろんな目的があり得ることは承知の上で、「役に立ちそうだからとりあえず資格をとる」という人も中にはいると思います。なぜそのような目的で行動をとるのか、それは楽だからです。勉強してるんだから楽じゃなくて苦痛でしょ。と思う人もいるでしょうが、中には勉強していない自分が苦痛と感じる人もいるのです。つまり、退屈している状態が嫌で、その状態を避けるのです。

正直、自分はこれにあてはまるところはあります。大学受験の時は特にそうでした。勉強していない時間は、何か悪いことをしているような感覚。だから、TVも絶ち、SNSをせず、遊びにも行かず、ただひたすら勉強をしていました。休み時間ですら単語帳を読んでいたわけですからもはや病的です。

もちろん○○大学に入りたいとう想いは本気でした。そのモチベーションがあったからこそ続けられたというのも本当です。ただ、退屈している状態が嫌だから勉強するとなると目的がすり替わってしまいます。このように、人は退屈を避けるために何か(ここでは勉強)の奴隷になってしまうという落とし穴があると思います。

本書を読んで初めて倫理の面白さに気づいたことも、私が高校生の頃に落とし穴にはまりかけていたことを示唆します。なぜなら私は大学受験で一度倫理学に触れているにもかかわらず、当時は面白さに気づかなかったからです。面白さに気づけなかった理由は今なら明快で、受験のための勉強をしていたからです。一人一人の哲学者がどういう背景で、どういう根拠で諸説を唱えているかなんてあまり考えませんでした。暗記科目としての社会科という労働に取りつかれていたのです。

では、どうすればいいか。私はこの本を読んで、次のことに意識して生活していこうと思いました。

  • 人は退屈するものである。退屈することは別に悪いことではない。
  • 理解することにたっぷり時間を使う。本を読むとき、資格の勉強をするとき、知識を入れることに執着しない。それを理解する過程が大切である。
  • 自分にとって本当に豊かさを感じれる贅沢をする。心の底から行きたいと思った場所に行く。心の底から読みたいと思った本を躊躇せず買う。そしてそういった暇つぶしとしての趣味に、贅沢に時間を使う。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。正直、本の内容を的確にとらえて書けた感想とは思いません。ただ、私がこの本を手にとって感じた本当の気持ちをつづっています。著者も文中で、とらえ方は人それぞれでいい。それでこそ、どう生きるかを問う倫理学だと背中を押してくれてます。だからこそ、この本を皆さんにぜひ手に取って読んでいただきたいです。

十人十色の感じ方ができるこの本だからこそ、読んだ方の様々な感情を共有したい。そう感じております。

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